売る場所を変えると、商品の見え方も変わる。
商品をつくるとき、最初は「何を売るか」を考える。
どんな商品にするか。
名前をどうするか。
パッケージをどうするか。
価格をいくらにするか。
そして、商品ページをつくって、SNSで紹介する。
ここまで考えると、「あとは販売するだけ」と思ってしまう。
でも、実際に自分たちで商品を販売してみると、もうひとつ考えなければならないことがあると気づく。
それが、
「どこで出会ってもらうか」
ということだった。
同じ商品でも、売る場所が変わると、見え方が変わる。
これは、実際にイベントやEC、販売スペースなどで商品を扱ってみて、強く感じるようになったことだ。
ECでは、じっくり見てもらえる
Webショップの商品ページには、ある程度の情報を載せることができる。
商品名。
写真。
説明文。
サイズ。
価格。
素材。
注意事項。
必要であれば、複数の写真を見てもらうこともできる。
お客さんは、自分のタイミングでページを見ることができる。
気になれば、文章を読み直すこともできる。
別の商品と比較することもできる。
つまりECでは、「少し時間をかけて理解してもらう」ということができる。
これはWebの大きな特徴だと思う。
もちろん、ページを見てもらえなければ始まらない。
写真や商品名だけで興味を持ってもらう必要もある。
それでも、会場で数秒しか見てもらえない状況とは違う。
情報を積み重ねて、商品を理解してもらうことができる。
イベントでは、数秒しかないことがある
ところが、イベント会場では状況が変わる。
歩いている人が、商品をちらっと見る。
少し立ち止まる。
値札を見る。
商品を見る。
そして、そのまま通り過ぎる。
場合によっては、数秒しかない。
そこで商品について長い説明を読む人は、ほとんどいない。
だからイベントでは、
「ちゃんと説明を書いてあるか」
だけでは足りない。
「見た瞬間に、何なのかわかるか」
が重要になる。
これは、Webの商品ページをつくっているだけでは気づきにくい。
実際に目の前で商品を見てもらって初めてわかることがある。
Hapick Felishで感じたこと
たとえば、STUDIO DiWで扱っているHapick Felish。
ブランドとして名前をつけ、パッケージを考え、商品として販売している。
Web上では、商品について説明することができる。
でもイベント会場で実際に販売してみると、別の問題が見えてきた。
「塩だと思わなかった」
という反応ではなく、
「食べる塩だと思った」
という受け取られ方が出てきた。
これは、とても大事な気づきだった。
こちらからすると、商品については説明している。
でも、お客さんからすると、
「塩」という情報を見た瞬間に、
「食用なのかな」
という理解につながることがある。
つまり、
情報がないわけではない。
情報が伝わっていないわけでもない。
むしろ、情報は伝わっている。
ただし、
「こちらが意図した意味とは違う形で伝わっている」
ということがある。
これは、Webだけを見ていたら気づきにくい。
「書いてある」と「わかる」は違う
Web制作をしていると、つい情報を整理して、
「必要なことは全部書いてあります」
という状態を目指してしまう。
もちろん、それは大切だ。
でも、情報が書いてあることと、相手が正しく理解できることは別の話だ。
商品名がわかる。
商品カテゴリがわかる。
何に使うものなのかわかる。
誰向けなのかわかる。
どんな場面で使うものなのかわかる。
それぞれ違う。
特に、初めて見るブランドや商品では、
「これは何?」
という最初の疑問を解消できないと、その先まで進んでもらえない。
イベントでは、その最初の理解が数秒で必要になる。
ECでは、写真や文章を見ながら少しずつ理解してもらえる。
同じ商品でも、必要な情報の出し方が変わる。
無人販売では、さらに違う
STUDIO DiWでは、イベントだけでなく、無人の販売スペースなどで商品を扱うこともある。
ここでも、イベントとは違うことが起こる。
スタッフがいない。
その場で説明する人がいない。
「これは何ですか?」
と聞くこともできない。
つまり、商品そのものと、そこに置かれている情報だけで判断してもらう必要がある。
そうなると、
商品名。
価格。
商品の特徴。
注意事項。
購入方法。
こうした情報の配置そのものが、販売体験になる。
これはWebにも少し似ている。
Webでも、基本的にはこちらが隣に座って説明することはできない。
だから、
「説明できる」
ではなく、
「説明がなくても、ある程度わかる」
状態をつくることが大切になる。
場所が変わると、商品の役割も変わる
同じ商品を販売していても、
ECでは「比較して選ぶ商品」になるかもしれない。
イベントでは「偶然出会う商品」になるかもしれない。
無人販売では「その場で判断して購入する商品」になるかもしれない。
誰かから紹介されて知る場合もある。
SNSで写真を見て知る場合もある。
イベントで実物を見てから、後日Webショップを訪れる場合もある。
つまり、販売場所は単なる「売る場所」ではない。
お客さんと商品が出会う状況そのものだ。
「どこで売るか」は、マーケティングだけの話ではない
販売場所というと、
「どこなら売れるか」
という話になりやすい。
もちろん、それも大切だ。
でも、実際にやってみると、それだけではない。
どこで売るかによって、
商品の見え方が変わる。
伝え方が変わる。
必要な情報が変わる。
価格の受け取られ方も変わる。
商品のサイズ感やパッケージの見え方も変わる。
そして、お客さんから出てくる質問も変わる。
だから販売場所を変えることは、単純に「販路を増やす」ということではない。
商品の見え方を変えてみることでもある。
イベントは、商品を見るための場所でもある
イベントに出ると、売上が気になる。
何個売れたか。
いくら売れたか。
どの商品が人気だったか。
もちろん、これは大事な数字だ。
でも、自分たちで販売してみると、それ以外にも持ち帰りたいものがある。
どの商品で足を止めたか。
どの商品を手に取ったか。
どこを見ているか。
どんな質問をされたか。
どんな説明をすると理解してもらえたか。
どの商品は説明しなくても伝わったか。
逆に、こちらが説明しないと伝わらなかったものは何か。
こうした反応は、商品ページのアクセス解析だけではわからない。
数字にならない情報も、次の改善につながる。
売れない理由を「場所が悪い」で終わらせない
もちろん、商品によって向いている場所はある。
イベント向きの商品もあれば、EC向きの商品もある。
その逆もある。
だから、ある場所で売れなかったからといって、すぐに商品そのものを否定する必要はない。
「この商品はイベントでは伝わりにくいのかもしれない」
「この価格帯は、この場所では判断されにくいのかもしれない」
「この商品は、実物を見るより写真でじっくり説明したほうがいいのかもしれない」
そんなふうに考えることができる。
売れなかったという結果を、
「商品が悪い」
「場所が悪い」
の二択にしない。
どこで、誰に、どのような状態で見てもらったのか。
そこまで分解してみる。
すると、次に試せることが見えてくる。
商品と販売場所は、一緒につくっていくもの
以前は、
商品をつくる
↓
販売場所を探す
↓
売る
という順番で考えていた。
でも、実際に動かしてみると、
商品
↓
販売場所
↓
見え方
↓
伝え方
↓
お客さんの反応
↓
改善
という循環になっていることがわかってきた。
商品をつくる段階から、
「これはどこで出会ってもらう商品なのか」
を考えておく。
そうすると、パッケージも変わるかもしれない。
写真の撮り方も変わるかもしれない。
商品説明も変わるかもしれない。
価格表示も変わるかもしれない。
イベントでの見せ方も変わるかもしれない。
Webだけでも、イベントだけでもない
STUDIO DiWでは、Webをつくることもする。
商品をつくることもある。
ECで販売することもある。
イベントに出ることもある。
だからこそ、最近はそれぞれを別々の仕事として考えなくなってきた。
Webをつくったら終わり。
商品をつくったら終わり。
イベントに出たら終わり。
ではない。
イベントで得た気づきをWebに戻す。
Webで見られている情報をイベントで試す。
お客さんの質問から商品説明を見直す。
販売してみて感じたことを、次の商品づくりに活かす。
そうやって、それぞれがつながっていく。
「売る場所」は、商品の一部なのかもしれない
商品そのものは変わっていない。
でも、
どこで見るか。
どんな状態で見るか。
どんな情報と一緒に見るか。
誰から紹介されるか。
どれくらい時間をかけて見るか。
それによって、商品の印象は変わる。
そう考えると、販売場所は商品とは別のものではなく、
「商品がどう見えるかをつくる環境」
なのかもしれない。
これは、小さなブランドほど大事なことだと思う。
小さなブランドだから、試せることがある
大きなブランドのように、最初からすべての販売チャネルを整える必要はない。
まずはイベントに出てみる。
小さなECを始めてみる。
限られた場所に置いてみる。
SNSで紹介してみる。
そして反応を見る。
うまくいかなければ変える。
別の場所で試す。
もう一度見てみる。
小さなブランドには、小さく試せるという強さがある。
最初から完璧な販売方法を決めなくてもいい。
実際に動かしてみることで、
「この商品は、こういう場所でこう見せると伝わりやすい」
ということが少しずつわかってくる。
販売することは、商品を完成させることでもある
商品は、つくった時点ですべてが決まっているわけではない。
実際に誰かに見てもらう。
手に取ってもらう。
質問してもらう。
購入してもらう。
あるいは、購入されない。
その一つひとつが、商品のことを知る材料になる。
そして、その材料を次の改善に使う。
だから販売は、
「つくった商品を売る最後の工程」
ではなく、
「商品を育てるための工程」
でもあるのだと思う。
STUDIO DiWが自分たちで販売する理由
STUDIO DiWでは、自分たちのプロジェクトを実際に動かしている。
Destiny Island WORLD。
うんのしまマーケット。
Hapick Felish。
ラッキークリスタル発掘体験。
商品、Web、SNS、EC、イベント。
それぞれを実際につないでみる。
そこで起きたことを見て、また考える。
もちろん、すべてを自分たちだけでやる必要があるとは考えていない。
専門的なことは、得意な人にお願いしたほうがいい場合もある。
でも、自分たちが実際の現場を知っていると、
「何をお願いすればいいのか」
がわかる。
「どこが問題なのか」
も見えやすくなる。
そして、Webだけ、商品だけ、イベントだけでは見えなかったつながりが見えてくる。
商品をつくることは、出会い方をつくることでもある
良い商品をつくる。
それだけでは終わらない。
その商品を、どこで知ってもらうのか。
どう見てもらうのか。
どんな情報を渡すのか。
どう理解してもらうのか。
どこで購入してもらうのか。
購入したあと、またどこで出会ってもらうのか。
商品をつくるということは、
実は、その商品の「出会い方」まで考えることなのかもしれない。
つくって、売って、また考える
Webだけを見ていると、わからないことがある。
イベントだけを見ていても、わからないことがある。
ECだけでも、SNSだけでもわからない。
だからこそ、それぞれを実際につないでみる。
そして、違う場所で商品を見てもらう。
そのたびに、
「ここでは、こう見えるんだ」
という発見がある。
その発見を、次のWebに戻す。
次の商品に戻す。
次のイベントに戻す。
次の企画に戻す。
STUDIO DiWにとって、プロジェクトを動かすというのは、そういうことなのだと思う。
つくって終わりではない。
売って終わりでもない。
場所を変えてみる。
見え方を確かめる。
反応を見る。
また少し変える。
その繰り返しの中で、商品もブランドも、少しずつ育っていく。
「どこで売るか」は、最後に決めることではない。
その商品が、誰と、どんなふうに出会うのか。
そこまで含めて、企画なのだと思う。
STUDIO DiWは、これからも自分たちでつくり、自分たちで届け、実際に動かしながら考えていきたい。
考える。
つくる。
届ける。
動かす。
育てる。
その先に、次のプロジェクトがある。
